9階外科病棟の廊下では、歩行訓練の患者とよく行き交いました。
 早朝、杖をついて廊下をゆっくり往復していたおじさん。
 この人は都内の運送会社のドライバー。股関節に水が溜まり、それを抜いてもらって、その後はリハビリに励んでいました。
 話しかけると愛想よく、いろんなことを話してくれるのですが、「早く帰りたいよ」

 杖で散歩するご仁は他にもいて、肩にバストバンドを巻いて、跛行する年配のおじさん。
 足の長さが左右違うそうです。腕は車にぶつかり、骨折したとか。このご仁も「退屈だよ。早く帰りたい」
外科病棟の廊下
 腕を骨折して私のとなりに入院していたご仁が退院した後に入ってきた、これまた手首骨折の若者、5日で退院しました。むろん完治ではないので、リハビリ通院してましたが。
 やはり彼も早く退院したかったと見えます。

 一方女性患者。
 早朝になると、廊下をゆっくり往復するI子さん(62)
 ほっそりした人で、コルセットをしています。
 「みんなで太極拳していたら、舞台から落ちて圧迫骨折起こしたの」
 話好きでちょっぴりセクシー。
 何度も立ち話しているうちに仲良くなり、私のことを「お兄さん」と呼ぶようになりました。
 I子さんには妹分がいて、H子(52)、Y子(44)。いずれもコルセットをしているので、「コルセット三姉妹」と名づけました。 彼女たちとは今でも交流が続いています。 
廊下を歩くコルセット女性
 さらに……。 早朝の廊下を車椅子で行き来していたおばさん(50代後半)
 パジャマの上から腹部をコルセットでギュッと締めつけているため、上から大きな乳房が(外側に)ブラ~ンとはみ出して、目のやり場に困るのですが、当人はうれしそうに、「これまで寝てたんですけど、やっと車椅子のお許しが出たんですよ」
 この人は車に追突された圧迫骨折。
 (おばさんの乳房については、コルセット姉妹も「あれ、何とかならないのかしら」とヒソヒソ。同性も気になると見えます)

 ところがこのおばさん、一週間も経たないうちに廊下をスタスタ。
 「えッ、もう歩けるの?」と聞いたら、「そうなんです。先生方もビックリしてます」とにこにこ。
 巨乳のほうはいくらかカバーしてました。
早朝のラウンジ
 このおばさんも含めて、女性陣は社交的で、いつもラウンジに集まって談笑してました。
 男性患者は散発的に顔を見せるのですが、輪のなかに入って談笑するということはありません。
 男性陣は閉鎖的で、退屈をかこち、早く帰りたがっているのに対して、女性陣は入院生活を楽しんでいるように見えました。「帰りたい」なんておくびにも出さない。

 この違いは何だろう?
 その理由を知りたく、女性たちにいろいろ探りを入れてみました。
 そこでわかったのは……。
 「ここにいると、三度三度食事が出てくるからね」
 ある女性が笑いながら告白しました。
 他の人に聞いてみると、「そうそう、それにここの食事、意外に美味しいんだもの」
 どうやらこのあたりが本音のようです。
 女性は家にいれば食事をつくらなければならないけど、ここにいれば上げ膳据え膳。後片づけも不要。しかもラウンジに行けば仲間たちと楽しく談笑できる。まさにこの世の天国。
食事は好評
 もっともひとり暮らしの私にとっては女性と同じ心境。
 だから入院生活を楽しめたの……かな?
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