それからしばらくして、クヌルプは故郷にもどってきます。
 故郷は変わったところもありましたが、変わらないところもあり、彼は克明に覚えていました。
 そこで彼はフランチスカがすでにこの世にいないことを知らされます。
  
 彼は友人の医者から入院を勧められているにも関わらず、故郷をくまなく歩き回ります。
 そして降りしきる雪のなか、自分の人生とは何だったのか、神に問いかけます。
 「私が14歳でフランチスカに捨てられました。あれから私の人生は大きく狂いました。あのときあなたはなぜ私を死なせてしまわなかったのですか」
  
 それに対して神はこのように答えます。
 「クヌルプよ。お前が若かったころのことを思い出してごらん。お前は小鹿のように踊りはしなかったかい? 美しい命がからだのふしぶしに震えるのを感じはしなかったかい? 娘たちの目に涙があふれるほど、お前は歌をうたい、ハーモニカを吹くことができはしなかったかい? それから最初の恋人のヘンリエッテを。そういうものがみな無に等しかったのかい?」
 そして、
 「私が必要としたのは、あるがままのお前なのだ。お前はいつも私とともに生きていた。お前は旅先で多くの人々を楽しませ、愛された。お前の人生はそれでよかったのではないか」
 「おっしゃる通りです。私の人生はそれでよかったのです」
  
 クヌルプはすべてを受け入れ、自分の人生を肯定し、深い眠りにつきました。

 若いころ読んだ印象とは違って、クヌルプは必ずしも希薄な人間ではない、と思いました。「人と一定以上関わらない」という信念を持っている。
   
 「するとヤツとは違うな」
 私の友人はクヌルプのような「信念」はない。
 鳥は3歩歩いたら直前あったことを忘れるように、友人は単に希薄なだけで、「漂泊の人」ではない。
 (洒脱で人を楽しませるという点では似ているが)
  
 それにしてもこの小説は若いころに読むならともかく、人生の晩年に読むべきものではない。すべて身につまされて、侘しい思いだけが残ります。
 しかもこの侘しさから未だに抜け出せない。嗚呼。

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