京都時代の友人某は、「当時のことはほとんど覚えてない」といいます。
 こちらは克明に覚えていて、ことあるごとに「こんなことがあった」「あんなこともあった」というのですが、彼は「ふーん、そんなことあったか」
   

 そんなことが多いので、いつしか「キミは、希薄なヤッちゃな」というようになり、彼もそれを認めるようになりました。
  

 「キミのような人間はどこかで覚えがあると思ったら、学生時代に読んだヘッセの小説『漂泊の魂』の主人公クヌルプや。あれに似てる」
 「へー、そうか」
   

 というわけで、図書館で借りてきました。
 当時は岩波文庫で「漂泊の魂」というタイトルだったのですが、今は主人公の名前でクヌルプ。(「漂泊の魂」のほうがいいタイトルだと思うのですが)
  

 この小説は「早春」「クヌルプの思い出」「最期」の三部構成になっています。

 病院から退院したクヌルプ(40ぐらい?)は、地方都市の皮なめし匠夫妻のところに逗留します。
 彼は粋でお洒落(ルックスもいい)、歌も上手でユーモアのセンスもあり、周囲の人々から好かれます。
 とくに近所で知り合いになった若い娘と夕方、遊園地でのデートを楽しみ、娘からも好感を持たれます。
 しかしそれもここまで。翌日はこの町をあとにします。

ヘルマン・ヘッセ「クヌルプ」   

 彼は14歳のとき、神学生(当時のエリート校)だったクヌルプは2歳年上のフランチスカを好きになります。しかし彼女は「神学生なんてつまんない。職人のように根を下ろした人でないと」
 彼はそのことばを真に受け、神学校をやめてしまいますが、彼女は彼を袖にし、別の職人と懇ろになります。

 「オレは弄ばれただけか」
 以来クヌルプの漂泊の人生が始まります。
 旅職人となった彼は妻子もなく、まともな親方にはならなかった。
 しかし自然と人生の美しさを見いだす人間となり、行く先々で人々の生活に明るさとくつろぎをもたらします。
  

 「人間はどんなに親しくなっても、魂までともにすることはできない」
 そんな人生観のもとに、彼はひと所に定着しない生き方を選びます。
 

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