今回私が選んだ句は、
 ①雲迅く裾乱るるや花杏
 ②花散らす雨に屋台の灯の一つ
 ③うららかや野辺の祠に猪口二つ
 ④べんがらの仕舞屋格子杏花雨

 ⑤暮六つの鐘や欅の芽吹き空…○
 (○は特選)
    

 この句会は特選だけではなく、並選でも選んだ理由を求められます。
 それがこちらにとってはいささか苦痛。
 というのも、積極的に選んでいるのではなく、消去法で選んでいるのだから。
  

 強いていうと、①は(多分)女性の句。「裾乱るるや」に色気を感じました。
 ②の「花散らす」は本来色っぽい意味があるけど、これは文字通り雨で櫻が散って人も少なくなったのに、一軒の屋台だけ灯が点っていてほッとした気分になる。
 ③は情景が浮かびます。「猪口二つ」が具体的で印象に残りました。
   

 ④は本来なら「仕舞屋(しもたや)のべんがら格子」とすべきだと思うけど、「べんがら」を印象づけたかったらしい。その努力を買いました。
 ⑤は「暮六つの鐘」で夕方の情景が浮かんできます。あとは「欅の芽吹き空」とさりげなくいうことで空の模様まで浮かぶ。なかなか味わい深い。
   

 結果は
 ①雲迅く裾乱るるや花杏……(2)
 ②花散らす雨に屋台の灯の一つ……(3)
 ③うららかや野辺の祠に猪口二つ……(3)
 ④べんがらの仕舞屋格子杏花雨……(1)
 ⑤暮六つの鐘や欅の芽吹き空……(5)○○
   

 ④は助手の女先生の作、⑤は宗匠の作(最多得票)。やっぱりなあ。
   

 今回敢えて採らなかった句
 ⑥可惜夜のかそけき風や花万朶(4)
 ⑦一節切花の宴にはな添へて(1)
   

 ⑥は耳慣れないことばが多い。可惜夜(あたらよ)とは過ぎるのが惜しいような夜、という意味。万朶(ばんだ)とは枝垂のことをいうらしいので、花万朶とはしだれ桜?
 作者は「可惜夜ということばを知って使ってみたかった」との弁。
 ⑦一節切(ひとよぎり)とは尺八のことらしい。
   

 「可惜夜」も「花万朶」も「一節切」も知らなかった。
 いつもわからないことばを使われた句は、理解できないので、採らないことにしています。
     

 それよりひどいのは
 ⑧光帯て幸届けるごと濃溝の滝(1)
    

 上五、中七、下五、いずれも字余り。
 そもそも「濃溝の滝」というのがわからない。
 それを指摘したら、スマホで画像を見せられ、「濃溝(のうみぞ)の滝といって千葉県にあります。TVで放映されて今話題の滝ですよ」
   

 そんなこといわれても、こちとら知らんわい。(華厳の滝なら知ってるけど)
 しかもこの人だって実際行ったわけではなく、TVの画像を見て詠んだとのこと。
   

 TVの画像を見ただけで「幸届けるごと」と感じるのは大した感受性だけど、行きもしないで「濃溝の滝」と固有名詞を出すのは、いかにも唐突で(みんな知ってて当たり前という)傲慢さが感じられます。
 むしろ固有名詞は出さないで、「TVで見た滝」を仄めかしたほうが謙虚で、好感が持てるのではないか。
  

 句会が終わってみんな帰ったあと、宗匠にそのことを指摘すると、「その通りです」
 だったらそのときにいえ。
 「ダメなものはダメ」といわなきゃ、その人のためにならないぞ。

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